『1対1』について自論

ago_jfc2008-08-04

サッカーと言うスポーツは、『1対1』の集まりだと思います。いろんな時間帯、場所、試合状況でそれぞれ選択すべきプレーも変わります。ボールがあるシーンだけでなく、ボールの無いところでも1対1は行われています。答えは、ひとつではありません。
しかし、どの場面においても変わらないものがあります。
さて、『1対1が強い』とは、何でしょうか?フェイントの種類を20個30個知っているということでしょうか?きれいなキックモーションできれいにパスができることでしょうか?確かにそれも必要です。間違いではないですが、正解でもない気がします。
まず、基本技術が大事であることはいうまでもありません。基本技術を習得するための反復練習は必要不可欠です。多くのフェイントを知っていることに越したことはありません。きれいなキックモーションのキックができて初めて思いどおりの強いキックができるようになるでしょう。しかし、そのことがすぐにサッカーに通用するのかといえば、ノーでしょう。
サッカーは、自分ひとりだけではゲームが成立しません。常に相手選手がいるということを忘れてはいけません。
フェイント20個30個を覚えることが目的ではなくて、それを試合の中で使えなければ、意味がありません。きれいなキックができれば、フリーキックには役立つでしょうが、相手選手がいるなかで、思い通りに蹴れなかったら、『1対1が強い』ということにはならないでしょう。
『1対1』と一言でいっても、ゲームの中ではいろんな場面があります。例えば、前半開始早々の場面と後半終了間際のロスタイム、守備側のゴール前と攻撃側のゴール前では、全く異なるプレーを選択するでしょう。その場面にあったプレーがあり、その選択肢を多く持っていることがプレーの幅につながります。いま、阿児JFCの練習では、この選択肢を増やすことをテーマに練習を行うことが多いです。ただ単に『前にクリア』なんていうことしか考えられないようなプレイヤーでは、次のプレーにはつながりません。
では、何が『1対1の強さ』でしょうか。ここからは、自論になるので、いろんな考え方があるでしょうが、自分は相手選手がいる(プレッシャーがある)なかで、いかにプレッシャーを感じずにプレーできるのかが『1対1の強さ』だと思います。
相手のペナルティエリアの中で、キーパーと1対1。相手キーパーにボールを当ててしまう。大きくゴールをはずす。というシーンをよく見ませんか?キーパーというプレッシャー、ここではずしたら・・・という自分の中に生まれる不安というプレッシャーに負けてしまっているように思います。もちろん、そこで思い通りに蹴れる基本技術を持っているということが前提ですが。基本技術の問題だけではない場合がほとんどです。
もちろん、そのプレッシャーに勝つためには、まず自信が必要で、その自信は基本技術を持つことから生まれます。確実にボールコントロールできるボールタッチであったり、フェイントの種類であったり、キックの正確さであったり。ここで、確かな基本技術があれば、それはどんなプレッシャーにも負けないで、落ち着いてプレーができるはずです。自然と周りが見えてくる。または、観る余裕ができるでしょう。迷いがあれば、不安があれば、必ずミスするでしょう。
ゴールまで、わずか数十センチ。キーパーもいないゴール前。普段であれば、難なく決めれるこの場面で、ゴールをはずしてしまうということが試合の中ではあります。もちろん、この選手にとって数十センチは、目を閉じていてもまっすぐに蹴れるだけの基本技術を持っています。
阿児JFCでは、多くのフェイントやフック、2人1組の基本技術の練習に重点を置いています。これらは、種類を覚えるためのものではなく、試合で使うためのものです。ただ回数をこなすだけの練習であれば、それは種類を覚えるためのものであり、練習のための練習となります。プレッシャーの中で、折角取得した基本技術をどう活かしていくのか?が大切です。では、なにをすれば、プレッシャーを感じずに基本技術を活かすことができるのか?
どんな練習をすればいいのか?という考えでは、答えはでないと思います。サッカーでどう遊ぶのかです。
外国人選手と日本人選手の大きな違いがここにあります。駆け引きやフェイントをどうやって覚えるのか?ということに重点を置きすぎて、一番大事なことを忘れているように思います。遊びの中で、大きな差がでます。2人選手がいて、ボールが1個あったとします。さて、どうするでしょうか?阿児JFCのほとんどの選手は、少し距離を置いてパスをするでしょう。しかし、そういう場面はサッカーのゲームの中であるでしょうか?止まったままで、プレッシャーのない状態でパスを交換するシーンは、まずゲームではありえないでしょう。練習のための練習をしているだけにすぎません。キックのフォームを固定するためだけなら必要かもしれませんが、その練習だけを続ければ、相手選手がマークについたときに同じキックはできなくなります。しかも、走りながらの場面では、どうキックするのでしょうか?外国人選手は、ボールが1個あれば、ボールの取り合いから始まります。いかに、相手の股の下を抜いてやろうか?新しいフェイントで抜いてやろうかとか、相手のフェイントを盗んでやろうかいうことから始まります。こういう遊びの中で、自然と相手との間合いや駆け引きを覚えていきます。遊びの中で、こういう遊びをしている選手は、プレッシャーを感じなくなります。むしろ、相手選手は自分のプレーを目立たせてくれる存在である(相手を抜けば自分が目立つ)というふうに考えるようになります。
『1対1』とは、サッカーの一番小さい形です。最近の練習の中では、流れの中で『1対1』の練習が『1対2』であったり、『2対2』に変化していく練習をしています。2人目の飛び出しのタイミングや声をかけるといった場面場面ごとの小さな指示をしていますが、少し大きな視野でサッカーを考えたときに、『1対1』という練習であっても、それはサッカーであり、『1対1』で終わらないのがサッカーです。
プレッシャーがある場面で、いかにプレッシャーを感じずに基本技術を発揮できるのか?これが、1対1の強さであり、阿児JFCがめざすべき方向です。中学年代になれば、この基本技術を活かすための、体の使い方やフィジカルの強さなども加わってくるのだと思います。
年代を問わず、まずサッカーは、練習を練習と考えてしまわずに、試合のためのトレーニングであり、サッカーを楽しむ、サッカーの遊びをすることが大切だと思います。